「公務員でも副業ができるようになった」というニュースを見て、副業を始めようとしたものの、何が許可されて何が処分の対象になるのか分からず手が止まっていませんか。
結論から言うと、2026年4月1日から国家公務員の自営兼業は明確に広がりました。ただし全面解禁ではありません。申請して承認を得る仕組みは残っており、無承認のまま稼げば懲戒処分の対象になります。地方公務員も2025年6月の総務省通知で運用が見直されましたが、判断するのは各自治体の任命権者です。
この記事では、人事院の一次資料と実際の処分事例をもとに、認められる副業の線引き、不動産賃貸の「5棟10室」基準、申請の流れ、そして月5万円を現実的に積むための考え方までを整理します。読み終えたとき、自分の職場で何をすればよいかが具体的に見えているはずです。
2026年4月、公務員の副業ルールは何が変わったのか
変化の起点は、人事院が2025年12月19日に公表した「自営兼業制度の見直しについて」です。新制度は令和8年4月1日、つまり2026年4月1日に施行されました。
これまでの国家公務員の自営兼業は、認められる事業が3つに限られていました。不動産等の賃貸、太陽光発電による電気の販売、そして農業など家業の継承です。この3類型以外は、原則として承認の土俵に乗りませんでした。
新制度では、ここに2つの類型が加わります。一つは「職員の有する知識・技能をいかした事業」、もう一つは「社会貢献に資する事業」です。人事院の資料では、前者の例としてハンドメイド品の販売やスポーツ・芸術の教室、後者の例として地域振興イベントの主催や高齢者向けの買い物代行が示されています。
注目したいのは、ブログ投稿や動画配信で広告収入を得る事業も対象になり得ると人事院のQ&Aが示している点です。副業解禁の恩恵を最も受けやすいのは、実はこの領域かもしれません。ただし承認するかどうかを決めるのは各府省です。人事院が一律に許可を出すわけではない点は、誤解のないようにしておきたいところです。
制度見直しの背中を押したのは職員の声でした。人事院が実施した兼業に関する職員アンケート(約2,000人が回答)では、現行制度下で兼業をしたことがある職員は6.2%にとどまる一方、今後兼業を希望する職員は32.9%に達しています。希望する理由の上位は「新しい知見やスキル・人脈を得たい」「自分の趣味や特技を活かしたい」でした。
国家公務員と地方公務員で「許可の出し方」が違う
同じ公務員でも、国家公務員と地方公務員では根拠法も判断する主体も異なります。ここを混同すると、申請先を間違えて時間を失うことになります。まずは全体像を表で押さえてください。
| 項目 | 国家公務員 | 地方公務員 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 国家公務員法103条・104条 | 地方公務員法38条 |
| 判断する主体 | 各府省(人事院の基準に沿って運用) | 任命権者(知事・市町村長・教育長など) |
| 2026年の主な動き | 自営兼業制度を4月1日から見直し | 2025年6月の総務省通知で運用を緩和 |
| 対象者の規模 | 約59.2万人(うち一般職は約29.3万人) | 自治体ごとに異なる |
国家公務員の場合、営利企業を営むこと自体が103条で禁止されており、報酬を得て他の事業に従事する場合は104条の許可が必要です。今回の見直しは、このうち人事院が所管する自営兼業の承認基準を広げるものでした。
地方公務員は38条により、任命権者の許可を受けなければ報酬を得る事業に従事できません。2025年6月の総務省通知は、許可基準を明文化して公開するよう各自治体に求める内容でした。神戸市は2017年に地域貢献応援制度を始め、生駒市も同年に在職3年以上・市内の地域貢献活動という条件で導入しています。宮崎県新富町は2018年、福井県は2019年に独自制度を設計しました。
つまり、住んでいる自治体によって副業の可否が変わるということです。国の制度が変わったから自分のところも同じはず、と決めつけないでください。
新制度で認められる副業・認められない副業
実務で迷いやすいのは「この作業は事業にあたるのか」という線引きです。人事院の基準は、職務専念義務、公務の公正な執行、国民の公務への信頼の確保という3つを柱にしています。以下は公開資料と実務の運用をもとに整理した目安です。最終判断は所属先の承認審査になります。
| 副業の内容 | 扱いの目安 | 注意点 |
|---|---|---|
| 株式・投資信託・FX・暗号資産の運用 | 原則として許可不要 | 職務で得た未公表情報の利用はインサイダー取引 |
| 単発の講演・寄稿 | 許可不要とされる | 継続的・定期的な依頼になると兼業扱い |
| 不動産の賃貸 | 一定規模を超えると承認が必要 | 管理を外部委託できる体制が前提 |
| ハンドメイド品の販売 | 新制度で承認対象に | 営業時間と利害関係者の有無を審査される |
| ブログ・動画配信の広告収入 | 対象になり得る | 顔出しの有無にかかわらず発覚例がある |
| スポーツ・芸術・語学の教室 | 新制度で承認対象に | 継続講座は事業計画書の提出が必要 |
| 営利企業の役員・従業員 | 原則として不可 | 許可制の対象で、無許可は処分事例あり |
| 職務と利害関係のある取引先での就労 | 認められない | 許認可・補助金・契約・監督の関係は特に厳格 |
表で見ると分かりやすいのですが、判断を分けるのは「単発か継続か」「職務と利害関係があるか」「勤務時間内に及んでいないか」の3点です。この3つを説明できる形に整えられれば、申請書の説得力は大きく変わります。
私の周辺でも、公務員の知人が「届けを出さずに細々と続けている」と話していたことがあります。制度が緩和された今も、その状態は変わっていません。手続きを踏まない限り、稼ぐほどリスクが上がるという構造は残っているのです。
不動産賃貸は「5棟10室・年1,000万円」が分岐点
公務員の副業として昔から認められてきた代表例が不動産賃貸です。ただし、規模が大きくなると「自営」にあたり承認が必要になります。国家公務員の場合、2026年4月以降は次のいずれかに該当すると承認の対象です。
- 一戸建ての賃貸で5棟以上
- アパート・マンションなどの賃貸で10室以上
- 土地の賃貸で契約が10件以上
- 駐車場の賃貸で10台以上
- 賃貸料収入が年額1,000万円以上
この基準を超えても、入居者の募集や建物の管理を管理会社に委ねるなど、職務に支障が出ない体制を組めば承認を受けられる道はあります。逆に言えば、自分で入居者対応や修繕手配を平日に担う計画では通りにくいということです。
地方公務員は自治体ごとの基準になるため、まず服務規程の確認が先です。株式や投資信託、FX、暗号資産の運用は、資産運用としての位置づけであれば原則として許可なく行えます。ただし確定申告は必要ですし、職務上知り得た情報を使えば別の話になります。
承認・許可申請の流れを5ステップで確認
制度の中身を理解したら、次は手続きです。国家公務員の自営兼業であれば、おおむね次の順序で進みます。地方公務員も流れは似ていますが、提出先は人事担当課になります。
- 所属先の人事担当に制度の有無と様式を確認する
- 事業計画書を作成する(内容・営業日・営業時間・収入見込み・利害関係の有無)
- 承認申請書を提出する
- 職務専念義務・公正性・信頼確保の3つの柱で審査を受ける
- 承認後に開業届や確定申告の準備を整える
書類づくりで差がつくのは、勤務時間外で完結する根拠の書き方です。平日昼間の対応が発生し得る計画は、それだけで審査のハードルが上がります。ブログや動画配信であれば、収録と更新を休日にまとめる運用を具体的に書き添えると伝わりやすくなります。
申請の前に、自治体や省庁の窓口で条件を確認してください。同じ法律でも運用の細部は組織ごとに違います。確認を省いて走り出すのが、最も割の悪い進め方です。
実際に懲戒処分になった事例
制度が緩和されたといっても、無許可の副業が処分対象である事実は変わりません。過去には次のような事案が報じられています。処分の重さは、勤務時間への影響や信用失墜の程度で変わってくる点に注目してください。
| 時期 | 事案の概要 | 処分 |
|---|---|---|
| 2017年 | 札幌市職員がコンビニや飲食店でアルバイトを繰り返す | 懲戒免職 |
| 2019年 | 岐阜県土岐市の消防署員がネット記事に寄稿(勤務中にも執筆) | 減給10分の1(1ヶ月) |
| 2022年 | 愛知県岡崎市職員が週末にスキー場で約6年間アルバイト | 減給10分の1(3ヶ月) |
| 2022年 | 相模原市職員が育休中に民間企業で就労し、聞き取りに虚偽報告 | 減給10分の1(6ヶ月) |
| 2023年 | 三重県伊勢市職員がネットオークションで9年間に約1,900万円の転売益 | 減給10分の1(6ヶ月) |
| 2023年 | 四日市市職員が性風俗店で勤務 | 停職6ヶ月 |
目を引くのは、インターネット上の仕事でも処分が出ている点です。土岐市の事案は記事寄稿、伊勢市の事案はネットオークションでした。自宅のパソコンで完結する仕事であっても、報酬を得て継続的に従事すれば兼業にあたります。
もう一つ見落とせないのが、虚偽報告が処分を重くするという点です。相模原市の事案では、無許可就労そのものに加えて調査への虚偽報告が問題視されました。聞かれてから隠す判断は、長期的に見て最も損な選択になります。
副業がバレる3つの経路と、それでも残る落とし穴
「申請しなければ分からない」という前提で動く人がいますが、実際の発覚経路はかなり限られています。代表的なのは次の3つです。
1つ目は住民税です。副業収入が増えれば所得割が上がり、給与支払報告書を通じて勤務先の経理が気づくことがあります。2つ目は人目です。接客業のように不特定多数と会う仕事は、住民からの情報提供につながります。3つ目は口です。信頼できる同僚に話したことが、時間をかけて上層部まで届くケースは珍しくありません。
意外に思われがちなのが、顔を出さない配信でも発覚する点です。声だけの動画配信で広告収入を得ていた職員が、匿名の情報提供をきっかけに内部調査で発覚した事例が紹介されています。匿名でも、継続的に発信していれば特定される可能性は残ります。
私が資料を読み込んでいて印象的だったのは、処分の重さが収入額ではなく態様で決まっている点でした。勤務中の居眠りや無断離席が重なった札幌市の事案は免職、勤務時間外のアルバイトにとどまった岡崎市の事案は減給です。本業への影響の有無が、そのまま処分の重さに反映されます。
公務員が月5万円を目指すときの現実的な設計
2025年の調査では、公務員の副業実施率は4.8%で、民間正社員の9.2%を下回っています。パーソル総合研究所の調査では、公務員の48.9%が「組織で副業が禁止されている」と回答しました。制度が緩和されても、現場の空気はすぐには変わりません。
だからこそ、最初から大きな収入を狙わない設計が有効です。月5万円という水準は、次のような組み合わせで現実味が出てきます。
- ブログの広告収入とアフィリエイトで月2万円(月1万PV前後が一つの目安)
- 単発の講演・寄稿で月2万円(1件1万〜3万円を年数回)
- ハンドメイド品の販売で月1万円(在庫を抱えない受注生産から)
この3本を並べると、1本が不振でも合計は崩れにくくなります。ただし、いずれも継続性のある事業と見なされれば承認の対象です。単発の寄稿として始めた仕事が定期連載になると、性質が変わる点には注意してください。
申請書に書く収入見込みは、控えめで構いません。初年度から月5万円と書く必要はなく、制度上は見込みと実績の整合が問われます。まずは小さく申請し、実績を積んでから事業計画を更新する進め方が、審査の観点でも安全です。
【FAQ】公務員の副業に関するよくある質問
ここでは、制度の確認でよく出る疑問をまとめました。判断に迷ったときの一次情報は、人事院のQ&Aと所属先の服務規程です。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 2026年4月から公務員の副業は全面解禁されたのですか? | 全面解禁ではありません。承認・許可制は残り、無承認の従事は処分対象のままです。 |
| ブログのアフィリエイトは認められますか? | 新制度では対象になり得ます。ただし各府省の承認審査を経る必要があります。 |
| 住民税で副業がバレるのはなぜですか? | 所得割が上がることで、給与支払報告書を見た経理担当者が気づく経路があります。 |
| 株式投資やFXも申請が必要ですか? | 資産運用として行う範囲は原則として許可不要です。確定申告は必要になります。 |
| 地方公務員の基準はどこで確認できますか? | 所属自治体の服務規程と人事担当課の通知が一次情報です。自治体ごとに差があります。 |
| 無承認で副業をした場合、どのような処分になりますか? | 減給や停職、事案によっては免職の例があります。態様と本業への影響で重さが変わります。 |
まとめ:制度は緩和されたが「申請しない自由」はない
2026年4月の見直しで、国家公務員の自営兼業は趣味や特技を生かす方向へ広がりました。地方公務員も2025年6月の総務省通知を機に、自治体ごとの運用整備が進んでいます。追い風が吹いているのは間違いありません。
一方で、無承認の副業が処分対象である構造は変わっていません。稼げば稼ぐほど住民税や人目から発覚しやすくなるため、隠す前提の計画は長持ちしません。制度を味方につける近道は、面倒に見える手続きを先に済ませることです。
まずは所属先の人事担当に、制度の有無と申請様式を確認してください。そのうえで、勤務時間外で完結する小さな事業から始めましょう。制度が整った今こそ、胸を張って説明できる副業の作り時です。


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